
フィルター完全性試験って、何のためにやってるんだろう……

フィルター完全性試験で何を測定しているのか、わからないわ……
フィルター完全性試験は、無菌ろ過のフィルターが菌を通さない状態かを確認する、非常に重要な試験です。
フィルター完全性試験が不適合になると、原因対応に追われたり、最悪ロット全数廃棄になったりと、大問題になりますね。
この記事では、医薬品製造で行われる完全性試験の種類・実施タイミング・対象となるフィルターを、現場視点でわかりやすくお伝えします。
- フィルター完全性試験って何?
- フィルター完全性試験の種類と測定原理
- フィルター完全性試験を行うタイミング

フィルター完全性試験は、注射剤などの無菌製剤には必須の試験。
ぜひ理解しておきましょう!
フィルター完全性試験とは?
フィルター完全性試験(Filter Integrity Test)は、「フィルターが菌を捕集する能力を発揮できる状態にあるか、またはあったか」を確認する試験です。
無菌製剤では最終滅菌をしない場合、薬液から菌を取り除けるのはフィルターろ過だけです。

もし、フィルター完全性試験が不合格になったら、どうなるの?

原因調査や影響範囲の特定、最悪の場合ロット全数廃棄になっちゃうよ!
完全性試験の合格ラインは、フィルターごとに決まっています。
合格ラインは、そのフィルターのカタログを参照するか、メーカーに問い合わせましょう。
完全性試験の対象となるフィルター
完全性試験の対象となるフィルターは、無菌工程に関わるフィルターです。
例えば、以下のようなフィルターが対象になります。
- 薬液を無菌ろ過するフィルター
- 加圧方式で充填を行う際の、加圧用エアフィルター
- 注射用水タンクのベントフィルター
これらのフィルターは十分な機能をしていないと、医薬品に菌が混入する可能性があります。
よって完全性試験で、フィルターが破損していないことや、初期不良がないことを確認するのです。
一方、無菌性に直接関わっていないフィルターは、完全性試験は必須ではありません。
完全性試験が必須ではないフィルターの例
- 前処理で薬液を通すフィルター
- 無菌ろ過より前工程の設備に設置されたベントフィルター
- 精製水や滅菌精製水タンクのベントフィルター
フィルター完全性試験の種類3種
医薬品製造で一般的に使われる完全性試験は、次の3種類です。
- バブルポイント法
- ディフュージョン法
- ウォーターイントリュージョン法
それぞれの特徴を解説していきます。
①バブルポイント法(目の最大径を確認する試験)
バブルポイント法は、よく使われる完全性試験です。
バブルポイント法では、フィルターの目の最大径を調べ、その径が規格より小さいことを確認します。
バブルポイント法の特徴
- もっとも基本的な完全性試験
- 0.2 µmの無菌ろ過フィルターで頻繁に使われる
- 判定基準(バブルポイント値)が明確で分かりやすい
バブルポイント法では、フィルター全体を濡らした後に圧力をかけ、液膜(表面張力)が保持している圧力を測ります。
試験方法
- フィルターに水を通し、全体を湿らせます
- エアーでフィルターの1次側(液が流れて来る側)に圧力をかけます
- 圧力を徐々に上げていきます
- フィルター2次側(液が出て行く側)に初めて気泡が出てきたときの圧力を読み取ります
最も大きい穴に張っている液膜の表面張力が弱いので、圧力を上げると最初にそこからエアーが漏れます。
初めてエアーが漏れたときの圧力を、正常なフィルターでの値と比較して、最大径が規格内かを確認する試験です。
②ディフュージョン法(気体拡散量を測る試験)
ディフュージョン法は、フィルターを通り抜ける微量な気体の流量を測定する試験です。
フィルターを通過するガスの拡散量が基準の範囲内かどうか、で判定します。
ディフュージョン法の特徴
- 0.2 µmの無菌ろ過フィルターで広く使われる
- オートメーション機器で使われやすい
- 「フォワードフローテスト」と呼ばれることもある
ディフュージョン法でもフィルター全体を湿らせた後、圧力をかけてフィルターを通過する気体の量を測っていきます。
試験方法
- フィルターに水を通して、全体を湿らせます
- フィルターの1次側(液が流れて来る側)から、テスト圧力までゆっくりと圧力をかけます
- 一定時間維持し、圧力と流量が安定するのを待ちます
- 一定時間(1分間など)にフィルターの2次側へ拡散するガスの流量を測定します
フィルター全体が湿っていると、1次側から2次側へガスが抜けていきません。
ただし実際は、拡散によってガスが膜を通過し、わずかに2次側へ通っています。
ディフュージョン法は、2次側へ拡散するわずかなガス量をチェックして、基準範囲内であることを確認する試験です。

バブルポイント法では目の最大径を調べていたのに対し、ディフュージョン法はフィルター全体の状態を調べているよ。
ウォーターイントリュージョン法(疎水性フィルター向け)
ウォーターイントリュージョン法は、疎水性のエアフィルターやベントフィルターで行う完全性試験です。
疎水性フィルターへ水が侵入しようとする圧力を測ることで、フィルターの性能を評価します。
ウォーターイントリュージョン法の特徴
- エアフィルター、ベントフィルター向け
- 液相のテストが難しい疎水性フィルターに最適
ウォーターイントリュージョン法でも、フィルターの表面を湿らせ、圧力をかけて試験します。
試験方法
- フィルターの1次側に高精度の流量計をセットします
- フィルター1次側から流量計までを水で満たします
- 1次側から一定の圧力をかけます
- 一定時間維持し、圧力と流量が安定するのを待ちます
- 一定時間(1分間など)にフィルター1次側の水の移動量を測定します
疎水性フィルター水を通しませんが、濡らした状態で圧力をかけると、わずかにフィルターへ浸透していきます。
圧力をかけたときに水が浸透した量(=1次側の水が移動した量)を高精度の流量計で測定して、基準値内かどうかを判定します。
フィルター完全性試験を行うタイミング
フィルター完全性試験を行うのは、一般に次の3つのタイミングです。
完全性試験を行うタイミング
- SIP(滅菌)前
・フィルター自体が正常なことを事前確認
・不良フィルターをSIPしても意味がないため
・SIP前のため、フィルターが不良だったときの対応が容易 - ろ過前
・無菌ろ過能力が発揮できる状態であることを事前確認
・PUPSIT(パプシット)と呼ばれることもある
・EU GMPではろ過前完全性試験を求められる
(参考:Annex 1, Manufacture of Sterile Medicinal Products)
・フィルターが不良の場合は、フィルター交換後、装置のSIPが必要 - ろ過後(製造後)
・無菌ろ過が問題なく行えた証明(最終保証)
・フィルターが不良で完全性試験が不適合の場合、ロット全数廃棄になる可能性がある
すべてを実施するかどうかは、各国のガイドライン・製薬会社の考え方に依ります。
特にろ過後完全性試験は、不適合の場合にロット全数廃棄になる恐れがあるため重要です。
その前段階で、ろ過前・SIP前を行って、無菌ろ過前にフィルターに異常がないことを確認します。

ろ過前完全性試験は、世界トレンドとしては要求されるようになってますね。
まとめ:フィルター完全性試験は無菌製剤の品質を支える最後の砦
フィルター完全性試験は、無菌ろ過に使ったフィルターが十分な能力を有していたかを証明するための試験です。
無菌製剤では、最終滅菌を行わないケースも多く、製品の無菌性はフィルターろ過に大きく依存しています。
そのため完全性試験が不適合になると、最悪の場合ロット全数廃棄につながりかねません。
完全性試験の種類(フィルターの性質や用途に応じて使い分け)
- バブルポイント法:最大径を確認
- ディフュージョン法:ガスの拡散量をチェック
- ウォーターイントリュージョン法:水の侵入度合いを調査
実施タイミングは、SIP前・ろ過前・ろ過後の3回。
無菌ろ過の前後でフィルターに異常がないことを確認することで、無菌性を保証しています。

製造オペレーターとして、「なぜこの試験をやっているのか」を理解しておくと、トラブル防止や的確な対応につながります。
次の記事では、フィルター完全性試験で不適合になったときの対応をまとめてます。
ぜひ、そちらも参考にしてください!


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