注射剤などの無菌製剤には欠かせない、フィルター完全性試験。
無菌製剤の品質を左右する、非常に重要な試験です。
しかし、ときどき「不合格」の結果が出てしまうことがあります。
不合格が出てしまうと、そのロットの扱いが慎重になり、生産計画や会社の利益に大きく影響します。
この記事では、フィルター完全性試験が不合格になる原因や、不合格になったときの対応策について説明します。
実際の現場経験も踏まえますので、あなたの現場で起こった際の参考にしてください。
フィルター完全性試験が不合格だとどうなるのか?
フィルター完全性試験が不合格になると、次のような影響が出ます。
- 製品の無菌性が保証できなくなる
- ロット全数を廃棄する可能性がある
- 生産スケジュールや会社の売上に打撃を受ける
完全性試験は、フィルターが菌を取り除く能力を十分発揮できたかどうかを保証する試験です。
そのため完全性試験が不合格だと、ろ過された製品が無菌であることを保証できません。
当然、無菌製剤の品質を保証できませんので、出荷NG・全数廃棄になる可能性があります。
そして出荷NG・全数廃棄となれば、生産スケジュール全体がずれ込みますし、会社利益にも大打撃。
フィルター完全性試験が不合格になると、多くの部署や会社全体、さらにはその先の患者さんにまで影響を及ぼしかねないため、慎重に対応しなければなりません。
フィルター完全性試験が不合格になる主な原因
フィルター完全性試験が不合格になる最悪のケースは、フィルターの破損です。
ただし、フィルターの破損以外にも、完全性試験が不合格になる原因はあります。
フィルターが破損していないならば、対応によって問題なく適合になるかもしれません。
ここではフィルター完全性試験が不合格になる主な原因について、4つ取り上げます。
① 配管接続部の緩み・バルブの締めの甘さ
配管接続部のクランプの緩みやバルブの締めの甘さは、フィルター完全性試験が不合格になる鉄板原因です。
クランプやバルブが緩んでいると、そこから加圧エアーが抜けて、圧力が下がってしまいます。
通常は製造準備段階で、装置全体でリークがないことを確認していることでしょう。
でも、SIPの振動や経年使用によって、リークチェック後でも緩むこともあります。(無菌状態は維持される、わずかな緩みが生じることがあります。)
② フィルターの湿潤不足
バブルポイント法やディフュージョン法は、フィルター全体を湿潤させてから測定する試験法です。
もしフィルターが十分に湿っていないと、試験中に湿潤不足のところからエアーが抜けてしまいます。
よって完全性試験が不合格になった時は、フィルターの湿潤が十分でない可能性があります。
③ 薬液の洗い流し不足
薬液の洗い流し不足は、ろ過後の完全性試験のときに起こりやすいです。
薬液がフィルターに残ったままだと、フィルター完全性試験は不合格になることがあります。
完全性試験ではフィルターに張った液膜の、バブルポイント法では表面張力が、ディフュージョン法ではガスの拡散量が重要になりますよね。
フィルターに張った液膜が変われば、表面張力も気体の拡散量も変わります。
だからフィルターに薬液が残っていて、水を使った条件での完全性試験を行えば、不合格になるのは不思議ではありません。
④ フィルターの破損・位置ずれ
もちろん、フィルター自体が破損している場合もあります。
SIP後のエアブロー、無菌ろ過中の加圧負荷などに負けて、フィルターが破損してしまうことも考えられるでしょう。
フィルター完全性試験が不合格のときに取るべき対応策
完全性試験が不適合でも、諦めるにはまだ早いです。
原因によっては追加の対応で復旧させ、再度完全性試験を行って合格になることもあります。
完全性試験が不合格なのを認めてしまうと、ロット全数廃棄など重い処置が待っています。
追加対応をやって合格すれば、フィルター自体に異常はなく、製品も無事でしょう。
以下では先ほどの原因をもとに、取るべき対応を4つ取り上げます。
① 配管接続部の増し締め
まずは、配管接続部が緩んでないかを確認しましょう。
最も怪しいのは、フィルターを取り付けた際にクランプを緩めている、フィルターハウジング周辺。
フィルターハウジング周辺を締めても不合格になるなら、完全性試験に関係しているすべての接続部を確認します。
実際、インラインで完全性試験ができる設備の場合は、普段触れないエアー供給のラインが緩むことが稀にあります。
増し締めをして、再度完全性試験を行って合格するなら、フィルター自体に異常はありません。
完全性試験が不合格になったら、まずは配管接続部の緩みを疑いましょう。
② フィルターを再度しっかり湿潤させる
湿潤不足が原因の場合、再度注射用水を、しっかりを流すことで解決します。
注射用水を流す時間を延ばしてみたり、フィルターに注射用水を触れさせるやり方を変えてみたり。フィルター全体が十分湿潤するよう、工夫しましょう。
一度湿潤させる方法がわかれば、次回からは同じ方法で行えば不合格になりませんね。
③ 薬液を十分に洗い流す
ろ過後完全性試験の場合は、フィルターに薬液が残っている場合があるので、よく洗い流すことで解決する場合があります。
注射剤などで界面活性剤が使われていると、簡単には洗い流しきれません。
何度も何度も注射用水を通して、十分に洗いましょう。
無菌ろ過後の完全性試験の場合は、薬液を十分に洗い流せていないために不合格になることが多いです。
ろ過後完全性試験は、無菌保証にとって非常に重要な試験。よく洗い流しましょう。
④ フィルター交換
上記対応をしても改善しない場合、フィルターが破損しているかもしれないため、交換すると解決するかもしれません。
交換後の再試験で適合すれば、元のフィルターの不具合だと言えます。
ただし、フィルターを交換して解決できるのは、SIP前と無菌ろ過前の完全性試験だけです。
無菌ろ過後の完全性試験は、製造に使われたフィルターに異常がないことを確認する試験。
当然、製造後にフィルターを交換しても意味がありません。
SIP前と無菌ろ過前であれば、まだ準備段階ですのでリカバリーが効きます。
責任者と相談し、対応しましょう。
まとめ:フィルター完全性試験が不合格でも、冷静に対応を
フィルター完全性試験が不合格になると、無菌性を保証できず、生産スケジュールや会社の利益にも大きな影響が出ます。
しかし、不合格になった原因は、フィルター自体ではない場合もあるのです。
完全性試験が不合格になる原因は、次の4つが挙げられます。
- 配管接続部やバルブの緩み
- 湿潤不足
- 洗い流し不足
- フィルター破損
それぞれ対応すれば、完全性試験が合格となり、無菌性を担保できるかもしれません。
フィルター完全性試験が不合格になる原因を知っておくことで、いざ不合格が出ても冷静に対応できます。
異常が発生した時こそ、製造オペレーターの腕の見せどころ。
冷静な対応で、製造の遅れを最小限にしましょう!


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