
現場でPUPSITって言葉が出てきたけど、何のことかさっぱりだよ……



完全性試験?使用前?難しそうで頭に入ってこないわ……
無菌医薬品の製造で耳にする「PUPSIT(パプシット)」。
意味は「ろ過前完全性試験」で、滅菌したフィルターを使う前に欠陥がないか確認する試験です。
この記事では、オペレーターがよく感じるPUPSITについての疑問に、現役の注射剤製造オペレーターがお答えします。
- PUPSITが必要な2つの理由
- PUPSITのメリット3つ・デメリット3つ



製薬工場で働く私が、PUPSIT(ろ過前完全性試験)の基礎をわかりやすく解説しますね!


PUPSITとは「ろ過前完全性試験」


PUPSITを日本語にすると、「ろ過前完全性試験」です。
ろ過前完全性試験とは、滅菌したフィルターを使う前に行う完全性試験のこと。
注射剤などの、無菌性が求められる液剤の現場で行われるフィルターの試験です。
液剤をろ過する直前に、フィルターの性能に問題ないことを確認して、製品品質を保証します。



そもそも「完全性試験」って何?



完全性試験については以下の記事で解説しているよ!
無菌製剤の製造に必須の知識だから、ぜひ知っておこう!


PUPSITの読み方は「パプシット」
PUPSITは、「Pre-Use Post-Sterilization Integrity Testing」の略語です。
- Pre-Use(使用前)
- Post-Sterilization(滅菌後)
- Integrity Testing(完全性試験)
PUPSITは「パプシット」と読まれることが多いです。
ただし、現場によっては別の読み方をする人もいます。



私の知る中で、「ポプシット」と読んでいる方もおられました。
なぜPUPSITが必要なのか?【2つの理由】





フィルターの完全性試験って、使用後にするわよね。
どうして使用前にやらないといけないのかしら?



そう思うよね。
でも使用前にするのは、ちゃんとした理由があるんだ。
PUPSITが必要な理由は、大きく次の2つです。
- フローマスキング(欠陥の隠蔽)を防ぐため
- 世界的に求められているため



他にもいくつか理由はあるけど、まずこの2つを押さえておきましょう!
理由①:フローマスキング(欠陥の隠蔽)を防ぐため
1つ目の理由は、フローマスキングという現象を防ぐためです。
フローマスキングとは、ろ過中に欠陥(ピンホールなど)がふさがれてしまう現象のこと。
フィルターに欠陥があっても、製品の成分がその穴をふさいでしまうことがあります。
すると、使用後の完全性試験では欠陥が見つからず、「合格」になってしまうのです。



えっ、欠陥があるのに合格になっちゃうの……?



そうなんだ。
だから“使う前”にも検査して、見逃しを防ぐ必要があるんですよ。
使用前(滅菌後)に試験しておけば、ふさがれる前の状態で欠陥を検知できます。
これが、PUPSITがフローマスキング対策として重視される理由です。
理由②:世界的に求められているため
2つ目の理由は、世界的に要求されているためです。
無菌医薬品の製造基準であるEU-GMPのAnnex1では、PUPSITが原則として期待されています。
実施しない場合は、リスクアセスメントによる正当な理由の説明が必要とされています。
- Annex1では、PUPSITの実施が原則求められる
- 実施しない場合は、リスク評価による正当化が必要
- 海外向け・輸出用の製造では特に重要になる
海外に医薬品を輸出する製造所では、こうした国際基準への対応が欠かせません。



規制対応の面からも、PUPSITは避けて通れないテーマなんですよ。
Annex1の要求内容や適用時期は改訂される場合があります。実務では必ず最新版をご確認ください。
PUPSITのメリット3選


PUPSITを実施することには、さまざまなメリットがあります。
ここでは、代表的な3つのメリットを紹介します。
- 国際的な規制要求に対応できる
- 無菌性保証の信頼性が高まる
- ロットアウトのリスクを低減できる
① 国際的な規制要求に対応できる
PUPSITを実施すれば、EU-GMPのAnnex1などの国際的な規制要求に対応できます。
海外向けや輸出用の医薬品製造では、こうした基準を満たすことが必須です。
規制に対応できることは、製造所の信頼性そのものにつながります。
② 無菌性保証の信頼性が高まる
使用前と使用後の二重で完全性を確認するため、無菌性保証がより強固になります。
片方だけの試験に比べ、フィルターの欠陥を見逃す可能性を減らせます。



無菌医薬品にとって、無菌性の保証は何よりも大切なポイントです。
③ ロットアウトのリスクを低減できる
使用前に欠陥を検知できれば、不良品の製造を未然に防げます。
使用後の完全性試験で不良が発覚すると、ロットアウトになりかねません。
早い段階で欠陥に気づけることで、大きな損失を防げます。
PUPSITのデメリット・課題3選


PUPSITには課題やデメリットもあります。
以下の3点を押さえておきましょう。
- 薬液ロスが増える
- 専用の設備・システムが必要になる
- 工程が複雑化し、作業工数が増える
① 薬液ロスが増える
PUPSIT(完全性試験)をすると、ろ過の最初に薬液を廃棄しなければなりません。
PUPSITの方法とロスが発生する理由は、次の表の通り。
| 方法 | ロス発生要因 |
| 注射用水で湿潤させる | ろ過の最初に水を払い出す →薬液を通過させて廃棄 |
| 薬液で湿潤させる | 湿潤させるための薬液を廃棄 |



この薬液ロスが、PUPSIT最大のデメリットだと思っています。
ロスをいかに少なくできるかが、設備導入やオペレーターの腕の見せ所です。
② 専用の設備・システムが必要になる
滅菌済みフィルターの無菌性を保ったまま試験するには、専用の設備が必要です。
こうしたシステムの導入には、相応のコストがかかります。
設備投資の負担が、PUPSIT導入のハードルになることもあります。



古い設備では、PUPSITに対応できていないことも。
設備改造するのは、かなりハードルが高いですね。
③ 工程が複雑化し、作業工数が増える
使用前の試験ステップが加わることで、工程全体が複雑になります。
作業工数が増えるほか、オペレーターの手技や教育の負担も大きくなります。



間違い・逸脱を起こさないため、オペレーターへの教育と十分な工程理解が必須です。
まとめ:PUPSITは「使う前に欠陥を見抜く」ための試験


PUPSITは、滅菌したフィルターを使う前に行う完全性試験です。
使用後だけの試験では見逃しかねない欠陥を、使用前に検知するのが目的でした。
- PUPSIT=使用前・滅菌後の完全性試験
- 必要な理由は「フローマスキング防止」と「規制対応」
- メリットもあるが、設備や工数の課題もある



無菌医薬品に関わるオペレーターにとって、PUPSITは知っておきたい基礎知識。
意味と目的を理解しておくと、日々の業務での納得感がぐっと高まりますよ。
当サイトでは、フィルター完全性試験に関して
も解説しています。ぜひ参考にしてください。












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